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カスハラに公務員が行う対策は?
自治体の事例と対応マニュアルも紹介

2026/09/10
カスハラに公務員が行う対策は?自治体の事例と対応マニュアルも紹介

「住民からの暴言や長時間クレームに職員が疲弊しているが、どうすれば良いのかわからない」

国の機関や地方自治体から、こうした声が増えています。

近年の調査により、公務員の約3分の1~半数がカスハラを経験している実態が見えてきました。

しかし公務職場には、対象者を選別できない・サービスの提供を断りにくい行政サービスの特性上、民間企業とは異なる難しさがあります。

本記事では、カスハラの定義から公務職場の先進事例・現場の対応法まで、公務職場という特殊な環境を踏まえた対策を体系的に解説します。

2002年から研修動画教材を製作・販売する株式会社アスパクリエイトでは、公務職場向けのカスハラ対応研修動画教材を提供しています。

▼まずはサンプル動画をご覧ください
第2巻 公務職場のカスタマーハラスメント対策(改訂版 カスタマーハラスメント)

アスパクリエイトの研修教材は1本20~30分の動画のため、集中力を持てる長さのコンテンツです。集合研修に比べて導入しやすく、繰り返し活用が可能。
また、専門家監修のもと製作されているため、正確性と客観性を兼ね備えています。

▼アスパクリエイトの研修教材(ラインナップ一覧)
https://www.asp-create.com/catalogues

【現場の声】自治体の人事担当者が語るカスハラ対策の実態

動画研修教材を制作・販売している弊社は、下記のような現場の声を聞いてきました。

「カスハラを受けた職員が『自分の対応が悪かったのかもしれない』と自責してしまい、被害を報告しないことが多くあります。組織として『あなたは悪くない』と伝える仕組みがなければ、被害は泣き寝入りで終わってしまいます。それを変えるには、研修で判断基準と対応手順を全員に共有するしかないと思いました」
——某市 人事担当者(40代)

個人の対応力に頼るのではなく、組織全体の認識をそろえることが、カスハラ対策の第一歩です。

公務員へのカスハラとは何か|正当なクレームとの違いを正しく理解する

公務員へのカスハラとは何か|正当なクレームとの違いを正しく理解する

前提として「何がカスハラで、何が正当なクレームなのか」を正確に理解しておきましょう。

カスハラとは何か?

厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」 (令和8年改訂版)では、カスハラを「職場において行われる①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの」と定義しています。

正当なクレームとの違いは?

カスハラとクレームの違いを判断する軸は「要求の内容」と「手段・態様」の2つです。

正当なクレーム カスハラ
要求の内容 行政サービスの不備への指摘など妥当性がある 妥当性がない・過大な要求
手段・態様 社会通念の範囲内 暴言・暴行、名誉棄損・中傷、長時間占拠
繰り返し電話・監禁など社会通念を超える

カスハラとクレームの判断基準を組織として明文化し、職員が迷わず動ける体制を整えることから始めていきましょう。

カスハラの基本的な概念や対策・予防法については、下記記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
カスハラとは?定義・基礎知識や企業が取り組む対策を紹介

参考:厚生労働省|カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

公務員のカスハラ被害の実態|調査データで見る深刻な現状

公務職場のカスハラ被害は、データで見ると想像以上に深刻です。

自治体職員の3人に1人~半数近くがカスハラを経験している

公務員のカスハラに関する2つの調査結果を紹介します。

調査①総務省|地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査報告書(2025年4月)

カスタマーハラスメントとその他ハラスメントとの比較グラフ

引用元:独立行政法人労働政策研究・研修機構|35.0%の自治体職員が過去3年間でカスハラを受けた経験――総務省が「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査報告書」を公表

同調査によると、過去3年間にカスハラを受けた経験がある自治体職員は35.0%と3割以上にのぼっています。

他のハラスメント(パワハラ15.7%・セクハラ3.9%)と比較しても、カスハラの経験率は突出して高く、公務職場で最も身近なハラスメントといえます。

参考:総務省|地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査報告書

調査②日本自治体労働組合総連合(自治労)カスタマーハラスメント調査結果 (2025年11月)

日本自治体労働組合総連合(自治労)が2024~2025年に公表したアンケートにおいても、カスハラを受けたことがあると回答する職員は半数近く(47.6%)に上っています。

また、自治労が公表するカスタマーハラスメント予防・対応マニュアルには、病院・公共交通など公務職場別の事例が豊富に収録されており、現場ごとの実態把握と対策の検討に役立ちます。

2つの調査を合わせると、自治体職員の3分の1から半数近くがカスハラ被害を経験しており、見過ごしてはならない事態です。

参考:自治労|カスタマーハラスメント調査結果
自治労|カスタマーハラスメント予防・対応マニュアル

対応に問題がなくても、多くの人が精神的な攻撃を受けている

調査では、カスハラの具体的な内容が明らかにされました。

カスハラの内容 発生率
脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃) 54.8%
業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求) 35.8%

参考:総務省|地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査報告書

また「行政サービスの利用者の不満のはけ口・嫌がらせ」がカスハラにつながったとする回答が72.5%と最も高くなっています。次いで「行政サービスの利用者・取引先の制度に対する理解不足」が47.1%です。

職員の対応に問題がなくても被害を受けるケースが大半であることを、組織として正しく認識していきましょう。

公務員のカスハラ対策が難しい理由|行政の構造的問題

民間企業と同じカスハラ対策をそのまま自治体に当てはめても、うまく機能しないケースが多くあります。

公務員のカスハラ対策には、行政特有の構造的な難しさがあるからです。

難しさの理由 内容
相手を選べない 行政窓口はすべての国民・住民に公平にサービスを提供する義務を負う。悪質な言動があっても対応を断りにくい
一人対応になりやすい 窓口業務は担当職員が個別対応する場面が多く、組織として問題を把握するまでに時間がかかる
毅然とした対応を取りにくい 国民・住民への「サービスの向上」を使命とする意識から、強い態度で臨むことへの心理的抵抗が根強い

こうした構造的な問題を乗り越えるには、個々の職員の対応力に頼るだけでなく、組織として判断基準と対応手順を整備することが必要です。

公務員のカスハラに関する法律・条例の最新動向

カスハラ対策を組織として進めるには、法的な根拠を正しく理解しておく必要があります。

昨今、国の指針から自治体独自の条例まで、カスハラ対応を後押しするルールが整備されつつあります。

最新の動向を把握した上で、対策に着手していきましょう。

2026年10月義務化|改正労働施策総合推進法改正

2026年10月、改正労働施策総合推進法の施行により、カスハラ対策が事業主の義務として明確に位置づけられました。

自治体も例外ではなく対策が求められます。義務化の対象となる対策は以下の3つです。

  • 相談体制の整備(職員が安心して相談できる窓口の設置)
  • 対応マニュアルの策定(カスハラの判断基準と対応手順の明文化)
  • 職員研修の実施(組織全体へのカスハラ対応力の浸透)

アスパクリエイトの動画研修教材には公務職場を想定した事例があり、学びが深まります。

▼ サンプル動画はこちらからご覧ください
第2巻 公務職場のカスタマーハラスメント対策(改訂版 カスタマーハラスメント)

▼ 公務職場のカスタマーハラスメント対策に関する動画研修教材
https://www.asp-create.com/catalogues/index/20#cus_hara02

全国で広がるカスハラ防止条例の制定状況

国の法改正に加え、自治体独自のカスハラ防止条例の制定も全国に広がっています。全国に先駆けて制定された主な条例は以下のとおりです。

自治体 条例名 施行時期 特徴
北海道 カスタマーハラスメント防止条例 2025年4月 議員提案による都道府県レベルでの全国初制定
東京都 カスタマー・ハラスメント防止条例 2025年4月 都、顧客等、就業者及び事業者の責務を明文化
三重県桑名市 カスタマーハラスメント防止条例 2025年4月 全国初の基礎自治体条例・氏名公表規定あり

※上記条例の対象は、民間事業者も含む

条例の制定は、カスハラ対応の正当性を組織内外に示す根拠になります。職員が毅然と対応できる環境を整えていきましょう。

参考:カスハラ条例成立、議員提案としては初めて来年4月に施行 北海道|朝日新聞
三重県が罰則付きカスハラ条例 全国初の制定へ 日本経済新聞

公務員カスハラの事例と自治体の対策|あるある事例から実際の取り組みまで

市役所窓口のペン立てやカウンター

公務員に対するカスハラへの対策を具体化するには、現場で実際に起きている事例と、先進自治体の取り組みを把握しておくことが有効です。

事例を知ることで、自組織の対策に落とし込みやすくなるはずです。

公務職場でよくあるカスハラの典型事例

公務職場では、以下のようなカスハラが日常的に発生しています。

【言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの】

  • 他の部署で、本来対応する窓口の場所を間違って教えられたことから激高し、ここ(担当ではない窓口)で手続させろと要求する
  • 「お前じゃ話にならないから、今すぐ偉い奴を出せ」と要求する
  • 「あいつをやめさせろ」「前の担当者に戻せ」と人事への口出しをする
  • 執拗に謝罪を要求する、土下座を強要する
  • 「税金が高すぎる。お前が払え!」と書類を破き職員を罵倒する

【手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの】

  • カウンターを越えて事務室に侵入し、職員に暴力をふるう・物を壊す
  • 「税金泥棒」「公務員は奴隷だ」などと長時間にわたり侮辱的な言葉を浴びせる
  • 窓口対応中の職員の顔や名札をスマートフォンで無断撮影し「SNSに投稿する」と脅す
  • 同じ内容の苦情を毎日繰り返し電話する
  • 名札のフルネームから住所を調べ、職員の自宅に電話や手紙を送りつける

職員側に非がなくても被害を受けるケースが大半です。組織として毅然と対応できる体制を整えていきましょう。

取組み①外線電話の録音

職員の個人情報を守るため、名札表記の変更や庁舎設備の整備に踏み切る自治体などが増えています。

例えば、青森県では2025年度から、庁舎の外線電話の通話録音を開始しました。

録音の導入は、悪質なクレームの証拠保全と、職員への心理的な抑止力の両面で効果を発揮します。

組織の現状を見直し、導入できる設備整備から着手していくといいでしょう。

参考:青森県|県庁におけるカスタマーハラスメントへの対応について

取組み②悪質事案への法的措置・氏名公表

悪質なカスハラに対しては、氏名公表を盛り込んだ条例制定や法的措置に踏み切る自治体も出てきています。主な事例は以下のとおりです。

事例 概要
三重県桑名市
(2025年4月)
全国で初めて氏名の公表措置を盛り込んだカスハラ防止条例を施行。2025年6月には実際に初の概要公表を実施した
参考: https://www.city.kuwana.lg.jp/shoko/shigoto/cusharaboshi/gaiyokohyo.html
大阪地裁判決
(2016年6月)
区役所に対して数か月間・合計95回・約23時間にわたる電話をかけ、職員への罵倒・脅迫的発言を繰り返した市民に対して、市が差し止めと損害賠償を請求。裁判所は妨害行為の差し止めと80万円の賠償を命じた
参考:カスハラの事例|暴言例・判例など対応法を弁護士が解説
千葉地裁判決
(2020年6月)
船橋市役所内で執拗な無断動画撮影・動画配信サイトで投稿を行なった市民に対して、市の申立てにより訴訟に発展。無許可での撮影を禁止する判決が出た
参考:行政職員に対するカスハラ対応の最新動向

氏名公表や法的措置は、悪質な加害者への抑止力として機能します。

「行政は住民を訴えられない」という誤った認識をもつ住民に対し、毅然と法的対応を取れる組織体制を整えておくことが必要です。

公務員カスハラへの現場対応マニュアル5ステップ

公務員カスハラへの現場対応マニュアル5ステップ

カスハラが発生した際、職員が迷わず動けるかどうかは、事前に対応手順を組織として共有できているかにかかっています。

以下の5ステップを参考に、自組織の対応マニュアルを整備してください。

ステップ1 カスハラかクレームかを即座に判断する

カスハラへの対応で最初に求められるのは、目の前の言動が正当なクレームかカスハラかを即座に判断することです。

判断の基準は、「要求の内容」と「手段・態様」の2軸で考えます。たとえば、要求の内容が正当であっても、大声での怒鳴り込みや長時間の居座りなど手段が社会通念を超えていれば、カスハラと判断できます。

現場での瞬時の判断を支えるために、組織として判断基準を明文化し、職員が迷わず参照できるよう整備していきましょう。

ステップ2 一人対応を避け複数・上司で対応する

カスハラと判断した場合、職員一人での対応を続けてはいけません。速やかに上司や同僚を呼び、複数人で対応する体制に切り替えてください。

複数人による対応には3つの効果があります。

  • 職員への心理的負担を分散できる
  • 加害者への抑止力になる
  • 対応内容を複数人で記録・確認できる

「その場を丸く収めようとして一人で抱え込む」という対応は、被害の長期化につながります。

管理職は「カスハラが発生したらすぐに報告する」という文化を職場に根づかせてください。

ステップ3 対応記録を残し組織として事実確認する

カスハラへの対応では、いつ・どこで・誰が・どのような言動をしたかを記録に残すことが必要です。

記録は、その後の組織的な対応や法的措置を取る際の根拠になります。

通話録音・窓口での対応メモ・複数職員による証言など、記録の手段を組織として整備してください。

ステップ4 被害職員のメンタルケアと相談窓口を活用する

カスハラを経験した職員への速やかなメンタルケアは、管理職の責務です。

被害職員が「自分が悪かったのでは」と自責に陥らないよう、管理職が「あなたは適切に対応した」と明確に伝えてください。相談窓口も活用していきましょう。

相談先 活用場面
庁内相談窓口 被害発生直後の初期相談・上司への報告
産業医・保健師 メンタル不調の早期発見・継続的なケア
弁護士 法的対応の検討・悪質事案への対処方針の確認
警察 脅迫・ストーキング等の違法行為への対応

被害を受けた職員が一人で抱え込まず、適切な支援につなげられる体制を整えることが大切です。

ステップ5 悪質事案は警察・弁護士等と連携して法的に対応する

脅迫・ストーキング・無断撮影など違法性のある言動に対しては、警察や弁護士と連携した法的対応を取ることが必要です。

「行政として穏便に済ませたい」という意識が、加害者を増長させるリスクにつながります。

法的対応を取る際は、ステップ3で蓄積した記録が証拠として機能します。

桑名市の氏名公表や大阪市・船橋市の判決が示すように、毅然とした法的対応は他の悪質事案への抑止力にもなります。

組織として、弁護士との顧問契約や警察との連携体制を事前に整えておきましょう。

よくある質問(FAQ)

地方公務員と国家公務員でカスハラ対策に差はある?

地方・国家公務員を問わず、カスハラ対策は強化されています。

国家公務員については、人事院が改正労働施策総合推進法の施行(2026年10月)に合わせて人事院規則にカスハラ対策を明記する方針を示しています。

地方公務員についても、同法改正により地方公共団体を含むすべての事業主にカスハラ防止措置が義務化されるほか、独自のカスハラ防止条例を制定する自治体も広がっています。

カスハラが原因で退職した場合、公務災害は認定される?

カスハラによる精神的ストレスが原因でメンタル不調に陥り、退職や休職に至った場合、公務災害として認定される可能性があります。

認定の可否は、カスハラの内容・頻度・職員への影響度などを総合的に判断されます。

認定を受けるためには、被害の記録が証拠として機能します。対応メモ・通話録音・診断書など、被害の実態を示す記録を組織として保全しておくことが必要です。

公務員へのカスハラ電話は録音しても問題ない?

結論として、適切な手順を踏めば問題なく実施できます。

録音前に「この通話は録音しています」と相手に告知することで、秘密録音には該当しません。

告知は加害者への抑止力としても機能するため、積極的に活用してください。

録音データは証拠として保全し、法的対応や組織内での事実確認に役立てられます。録音の運用ルールを組織として整備した上で、職員に周知しましょう。

まとめ|公務員カスハラ対策に今すぐ着手を

公務員へのカスハラは、半数近い職員が経験する深刻な課題です。

被害職員を守るには、個人の対応力に頼らず、組織として判断基準・対応手順・相談体制を整備することが必要です。

2026年10月からの法改正による義務化を機会に、組織対策の整備を進めていきましょう。

公務員に対するカスハラ対策のひとつとして、研修を通じた職員全員への意識共有が有効です。

アスパクリエイトのカスハラ対応研修教材は、現場を想定したリアルな事例で学びになると好評です。集合研修に比べて導入しやすく、繰り返し活用が可能。ぜひお役立てください。

▼ サンプル動画はこちらからご覧ください
第2巻 公務職場のカスタマーハラスメント対策(改訂版 カスタマーハラスメント)

▼ 公務職場のカスタマーハラスメント対策に関する動画研修教材
https://www.asp-create.com/catalogues/index/20#cus_hara02