コラム

企業が取り組むべき人権デュー・ディリジェンスの
重要性と実践方法

2025/04/10
話し合う三人の社員たち

はじめに

近年、企業活動における「ビジネスと人権」の問題が重要視されるようになりました。特に、多国籍企業やグローバル市場でのビジネスを展開する企業にとって、人権デュー・ディリジェンス(Human Rights Due Diligence:HRDD)の実施は欠かせないものとなっています。本記事では、人権デュー・ディリジェンスの基本概念とその必要性、実施のための具体的なステップについて詳しく解説していきます。

人権デュー・ディリジェンスとは?

イメージイラスト_人権デュー・ディリジェンス

人権デュー・ディリジェンスとは、企業が自社の事業活動やサプライチェーンを通じて生じる可能性のある人権リスクを特定し、評価し、防止・軽減するためのプロセスを指します。2011年に国連が採択した「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」において、企業の人権尊重責任の一環として示されました。

特に、欧州では人権デュー・ディリジェンスの義務化が進んでおり、フランスの「企業注意義務法」やドイツの「サプライチェーン・デュー・ディリジェンス法」などが制定されています。日本企業も、グローバル市場での競争力を維持するために、この流れに対応する必要があります。

なぜ企業にとって人権デュー・ディリジェンスが重要なのか?

  1. 法規制の強化への対応:欧州を中心に人権デュー・ディリジェンスの義務化が進んでおり、対象となる日本企業も増えています。適切な対応がなされない場合、取引停止や罰則の対象となるリスクがあります。
  2. 企業価値の向上とブランドの保護:企業の社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点から、人権を尊重する企業姿勢は投資家や消費者から高く評価される要素となります。
  3. 取引先・ステークホルダーとの信頼構築:取引先や消費者、従業員などのステークホルダーとの関係を良好に保つためには、人権リスクを軽減し、信頼を築くことが不可欠です。
  4. リスクマネジメントの一環として:企業が関与する人権侵害が公になれば、訴訟リスクや風評被害に発展する可能性があります。人権デュー・ディリジェンスを通じて事前にリスクを特定・対策することが、長期的な経営安定につながります。

人権デュー・ディリジェンスの実施ステップ

イメージイラスト_実施ステップ

人権デュー・ディリジェンスは以下の4つのステップで構成されます。

1. 人権への負の影響の特定・評価

企業は、自社の人権方針に基づく取り組みを進めるにあたり、まず人権についての自社の実態を把握することから始めます。その内容としては、自社が関与している、又は関与する可能性のある人権の負の影響を特定し、その被害を評価します。その上で発生する頻度、被害の深刻度などから、取り組む優先順位を確認していきます。

2. 負の影響の防止・軽減

負の影響への対応を進めるのは、個々の企業の取り組み方によって必要な措置が異なりますが、それぞれステークホルダーとの対話を行いながら、どのような措置が適切かを検討していくことになります。

①自社が人権への負の影響を引き起こしている・助長している場合

企業は原因となる活動を直ちに停止し、その事態に至った原因や影響を確認・分析して再発の防止対策を講じる必要があります。

②自社の事業・製品・サービスが人権の負の影響に直接関連している場合

直接原因に働きかけることはできなくても、負の影響を防止・軽減するように、自社が働きかけるなどの影響力を行使したり、支援するなども方法で取り組むことが期待されています。

③取引の停止

取引を停止してしまうと負の影響との関係が途切れてしまい、負の影響が残ることが懸念されるため、まずは取引先が負の影響を軽減するように努めることが期待されています。

④紛争等の影響を受ける地域からの「責任ある撤退」

その地域にとどまること自体が負の影響につながる事業活動でも、完全に撤退してしまうことが地域経済や住民の生計等に大きな影響を与えるような場合もあるため、慎重に計画をたて、ステークホルダーへの負の影響を考えた行動を取る必要があります。

⑤構造的な問題との向き合い方

企業の事業やサプライチェーンが、社会の構造的な問題を利用して利益を得たり、人権被害を助長することが無いように、企業として取り組んでいくことなどが期待されています。

3. 取組の実効性の評価

このステップでは、自社が関与している人権への負の影響についての対応が行われているかを継続的にモニタリングして、取り組みの改善を図ることが求められています。その際、ステークホルダーから情報を収集したり、質的な指標・量的な指標に基づいた評価をするなど、広く情報を集める必要があります。

4.説明・情報開示

こうして調べてきた企業の人権への取り組みについて結果を公開します。その際、どのような人権への負の影響のリスクがあったのか、優先順位付けの基準、防止・軽減のための取組、実効性評価の方法・結果などを公開し、外部の専門家による検証を受けることが推奨されています。

ビジネスと人権 取り組みを進めるために必要な研修

1. 様々な社内の人権リスク 人権デュー・ディリジェンスでみていかなくてはならない人権リスクには、26の分野がリストアップされています。

人権リスクは、パワハラ・セクハラ・マタハラや外国人労働者の権利、児童労働、テクノロジー・AIに関する人権問題、プライバシーの権利、差別、知的財産権、サプライチェーン上の人権問題、など多岐にわたっています。会社の担当者が気にしておくだけでなく、すべての労働者が当事者ともいえるのです。

2. 人権デュー・ディリジェンスと研修 人権デュー・ディリジェンスを進めていく中で、継続的にプロセスを繰り返して、より実効性のある対策を取っていくようになりますが、社内のハラスメント対応などについては、ドラマ事例のある動画によるeラーニングが効果的です

3. コストと負担の問題 サプライチェーンの中の中小企業にとって、人権デュー・ディリジェンスの実施には負担が大きいと考えられがちです。しかし、業界団体のガイドラインを活用したり、外部専門家の支援を受けることで、効率的に取り組むことが可能です。

まとめ

企業にとって、人権デュー・ディリジェンスはもはや選択肢ではなく、事業継続のための必須要件となっています。法規制の強化や投資家の関心の高まりを受け、積極的な対応が求められます。

本記事で紹介した実施ステップを参考にしながら、自社の状況に応じた取り組みを進めていきましょう。持続可能なビジネスの実現には、企業の責任ある行動が不可欠です。

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